小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
ずっと前には、ちょっと旅行するのにも、バスケットを下げてゆくというふうで、流行したものです。年ちゃんのお家に、その時分、お父さんや、お母さんが、お使いになった古いバスケットがありました。 年ちゃんが、ある年の夏、お母さんにつれられて田舎へいったときには、このバスケットにりんごや、お菓子を入れて持ってゆきました。そして、帰りには、お土産のほかに、海岸で拾った石ころや、貝がらなどを中へいれて、汽車に乗ると、このバスケットを網だなの上に載せておきました。 年ちゃんは、お母さんや、妹のたつ子さんと汽車の窓から、青々とした外の景色をながめていますと、遠い白雲の中で、ぽかぽかと電がしていました。そのとき、汽車は、全速力を出して走っていたので、頭の上の網だながギイギイと音をたてていました。そのたびに、バスケットも揺れています。年ちゃんは、 「あのかごに、青い石や、赤い貝がらが入っているのだな。」と、なんとなく楽しかったのでした。 お家へ帰ると、バスケットに入っていたものは、みんな出されてしまいました。 「もう、このかごは、使いませんね。」と、いって、お母さんは、バスケットを日に当てておしまいになりま
小川未明
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