小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
どこのお家にも、古くから使い慣れた道具はあるものです。そしてそのわりあいに、みんなからありがたがられていないものです。英ちゃんのおうちの古いはさみもやはりその一つでありましょう。 英ちゃんの、いちばん上のお姉さんが小さいときに、そのはさみで折り紙を切ったり、また、お人形の着物を造るために、赤い布や紫の布などを切るときに使いなされたのですから、考えてみるとずいぶん古くからあったものです。 その時分にはこんな黒い色でなく、ぴかぴか光っていました。そして刃もよくついていてうっかりすると、指さきを切ったのであります。 「よく気をつけて、おつかいなさい。おててを切りますよ。」と、お母さんが、よく、ご注意なさったのでした。 お姉さんは、おちついた性質で、お勉強もよくできた方ですから、めったに、このはさみで指さきを切るようなことはしませんでした。使ってしまえば、箱の中に、ちゃんとしまっておきました。 お姉さんが、まだ十か十一のころです。ある日のこと、 「あれ、なあに。」と、ふいにお母さんにききました。 「なんですか。」と、お母さんは、おわかりになりませんでした。 「アカギタニタニタニって?」 「ああ
小川未明
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