小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
正ちゃんは、いまに野球のピッチャーになるといっています。それで、ボールをなげて遊ぶのが大すきですが、よくボールをなくしました。 「お母さん、ボールをなくしたから、買っておくれよ。」と、学校へいこうとしてランドセルをかたにかけながら、いいました。 「また、なくしたのですか。二、三日前に買ったばかりじゃありませんか。」 「僕、ボールがないとさびしいんだもの。」 「いいえ、そう毎日、ボールばかり買ってあげられません。」と、お母さんはおっしゃいました。 「ねえ、お母さん、もうなくなさないから。こんどから、きっとなくなさないから。」 「なくなさないと、なんどいいましたか。ものを粗末にするからですよ。」 「粗末になんかしないよ。だって、どっかへいってしまうんだもの。」 「おとなりの誠さんなんか、おちついていらっしゃるから、おまえみたいに、そうものをおなくしになりませんよ。」と、お母さんは、となりの誠くんのことをほめられました。 「誠くんだって、なくすやい。昨日、上ぐつを片っぽおとしてきて、お母さんにしかられていたから。」と、正ちゃんはいいました。 「じゃ、今日は買ってあげますから、名まえを書いてお
小川未明
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