小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
小学校にいる時分のことでした。ある朝の時間は、算術であったが、友吉は、この日もまたおくれてきたのであります。 「山本、そう毎日おくれてきて、どうするんだね。」と、先生は、きびしい目つきで、友吉をにらみました。そして、その時間の終わるまで、教壇のそばに立たせられたのです。ほかの生徒たちは、先生から宿題の紙をもらったけれど、友吉一人は、もらうことができませんでした。 鐘が鳴ると、生徒らは、先を争って廊下から外へとかけ出しました。そのとき、良一は、先生が教員室へいかれる後を追ったのです。 「先生、山本くんは、働いているので、遅刻したのです。」と、いいました。 この意外な報告に、先生は、びっくりしたようすでした。 「そうか、なにをしているのだね。」 先生は、良一の顔を見られました。良一は、ついこのあいだ、友吉が新聞配達をしているのを見たことを話したのであります。 「よく知らせてくれた。だが、なるたけ時間におくれないようにいってくれたまえ。」 先生の声は、和らいで、目には、愛情がこもっていました。 そんなことがあってから、二人の少年は、仲よしとなりました。高等科を卒業するころには、たがいに家庭の
小川未明
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