小川未明
小川未明 · 日本語
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小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
鈍い砂漠のあちらに、深林がありましたが、しめっぽい風の吹く五月ごろのこと、その中から、おびただしい白い蛾が発生しました。 一時、ときならぬ花びらの、風に吹かれたごとく、木々の枝葉に蛾がとまっていたのです。それは、また、ちょうど、降りかかった、冷たい雪のようにも見られました。 しかし、その深林は、蛾にとって、あまり好ましくなかった。夏にでもなれば、そこにはいろいろの毒草や、雑草に花が咲いたであろうけれど、この時分には、まだ花が少なかったからです。 ある日のこと、蛾の仲間が、外から林に帰ってくると、おおぜいに喜ばしい知らせをもたらしたのでした。 「ここから、あちらに見える丘を越してゆくと、いま、りんごの花盛りです。それは、いい香いがしています。」といいました。 この知らせは、たちまち、蛾ぜんたいに知れわたりました。 「それなら、私たちは、この陰気な森の中から、その明るいりんごばたけに、移ろうじゃありませんか……。」 外から、知らせをもたらした一群の蛾が道案内となりました。そして、そのあとからみんながいっしょにつづいて飛び立ったのであります。 「さあ、出かけましょう。」 一群の蛾が、花びらを
小川未明
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