小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
外国人が、人形屋へはいって、三つ並んでいた人形を、一つ、一つ手にとってながめていました。どれも、同じ人形師の手で作られた、魂のはいっている美しい女の人形でした。 一つは、すわっていましたし、一つは立っていました。そして、もう一つは、手をあげて踊っていたのであります。 どれを買ったらいいだろうかと、その外国人は、ためらっていましたが、しまいに、つつましやかにすわっているのを買うことにしました。それを箱にいれてもらうと、大事そうにして、店から出ていってしまいました。 残った、二つの人形は、たがいに顔を見合わせました。そして、そばに、だれもいなくなると、お話をはじめたのです。 「とうとう、あの方は、いってしまいましたね。」 「わたしたちは、いつまでもいっしょにいたいと思いましたが、だめでした。このつぎには、だれが先にお別れしなければならないでしょうか……。」 二つの人形は、心細そうにいいました。しかし、こうなることはわかっていたのです。美しい、三つの人形が、はじめて、このにぎやかな街の店さきにかざられたとき、通る人々は、男も、女もみんな振り向いてゆきました。きれいなお嬢さんや、奥さまたちまで
小川未明
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