小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
かず子さんが、見せてくれた紅い貝は、なんという美しい色をしていたでしょう。また、紫ばんだ青い貝も、海の色が、そのまま染まったような、めったに見たことのないものでありました。 「ねえやが、お嫁にいくので、お家へ帰ったのよ。そして、私に送ってくれたのよ。図画の先生が、ほしいとおっしゃったから、私いくつもあげたわ。」と、かず子さんが、いいました。正吉は自分もほしいと思ったけれど、おくれと口に出してはいいませんでした。かえって、反対に、 「なあんだい、もっと、もっと、きれいなものをかず子ちゃんは、知っていないだろう?」と、いったのです。かず子さんは、ぼんやりと、正吉の顔をながめて、 「もっときれいなものって、貝? 石? 正ちゃんは、持っているの。」と、ききました。 「持っていないけど、あるよ。」 「ありゃしないわ。」 「あるから。」 「じゃ、見せてよ。」と、かず子さんは、いいました。 正吉は、ただ、なんでも悪口をいってみたかったのです。なぜなら、自分の家にいた女中のしげは、お嫁の話どころでなく、いつも欲深げな父親がたずねてきては、外へ呼び出して、おしげが働いてもらったお金を、みんな取り上げてい
小川未明
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