小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
それは、ずっと、いまから遠い昔のことであります。 あるところに目のよく見えない娘がありました。お母さんは、娘が、まだ小さいときに、娘をのこして、病気のため死んでしまいました。その後にきましたお母さんは、この娘を、ほんとうの自分の産んだ子供のようにかわいがらずに、なにかにつけて娘につらくあたりました。 娘は、目こそあまりよく見えませんでしたけれど、まことにりこうな女の子でありました。そして、後にきたお母さんに産まれた、弟の三郎の守りをしたり、自分のできるかぎりの世話をしたのであります。 こんなに、弟をかわいがりましたのにかかわらず、お母さんは、やはり娘を目の敵にしました。お母さんは、じつにものの道理のわからない人でありましたけれど、弟の三郎はこの姉を慕い、そのいうことをよくきく、いい子でありました。 三郎は、一羽のかわいらしい小鳥を飼っていました。その小鳥は、羽の色が美しいばかりでなく、いい声を出して、朝から晩までかごの中でさえずりうたいましたから、三郎はこの小鳥を愛したことは一通りでありませんでした。また三郎のいちばん大事にしていたのは、この小鳥であったことはいうまでもありませんでした
小川未明
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