小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
沖の方に、光ったものが見えます。海の水は、青黒いように、ものすごくありました。そして、このあたりは、北極に近いので、いつも寒かったのであります。 光ったものは、だんだん岸の方に近寄ってきました。そして、だんだんはっきりとそれがわかるようになりました。それは、氷山であったのです。 氷山はかなり、大きく、とがった山のように鋭く光ったところもあれば、また、幾人も乗って、駈けっこをすることができるほどの広々とした平面もありました。そして、海の水の中には、どれほど深く根を張っているかわからないのでした。氷山は、すべて、こうした水晶のような氷からできています。それが潮の加減で漂ってくるのです。 このあたりの海には、ほとんど、毎日のごとくこうした氷山を見ました。あるときは、悠々として、この大きな氷の塊は、あてもなく流れてゆきました。そして、遠くにゆくまで、その光ったいただきが、望まれたのであります。さびしい、入り日が、雲を破って、その氷山に反射しています。それは、遠く、遠くなるまで、岸に立って、ながめている人たちの目の中に映ったのであります。 また、あるときは、この氷山が、まるで蒸気機関のついている
小川未明
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