小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
さよ子は、叔母さんからもらったおあしを大事に、赤い毛糸で編んだ財布の中に入れてしまっておきました。秋のお祭りがきたら、それでなにか好きなものを買おうと思っていました。 もとよりたくさんのお金ではなかったのです。けれど、さよ子はそれを楽しみにして、ときどき机のひきだしの中から、赤い毛糸の財布を取り出しては、振ってみますと、中に銭がたがいに触れ合って、かわいらしい鳴き音をたてるのでありました。 さよ子は、それでほおずきを買おうか、南京玉を買おうか、それともなにかおままんごとの道具を買おうかと、いろいろ空想にふけったのであります。すると、なんとなく、その日が待ち遠しかったのでありました。 まことに、いい天気の日で、のら仕事の忙しかったときでありました。家々のものは、みんな外の圃に出ていて、家にいるものはほとんどありませんでした。 家の前には、大きな銀杏樹がありました。その葉がしだいに色づいてきました。さよ子は壊れかかった石段に腰をかけて、雑誌を読んでいました。そのとき、同じように、隣のおばあさんが、やはり家の前に出て、日当たりのいい暖かな場所にむしろを敷いて、ひなたぼっこをしていました。 お
小川未明
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