折口信夫 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「さうや さかいに」 折口信夫 柳田国男先生が「さうやさかいに」を論ぜられて後、相当の年月が立つた。その論が、画期的なものであつたゞけに、此に対して、何の議論も現れなかつたことは、世間が先生のこの方言論を深く、認容したと言ふことになる訣である。 今頃更めて、ある時期における京阪語の代表的なものとせられてゐた「さうやさかいに」論を書きついで行く必要はない気がする。併し此で定論を得てをさまつた、この語の論策を綴める為に、かう言ふ追ひ書を書き添へておいた方が、よいと思ふ。其で先生にしてみれば、時間さへあれば、当然書き直してゐられるはずの部分を、先生よりは暇人である私が、少しばかりの書きつぎをさせて頂くつもりになつたのである。謂はゞ、最みすぼらしい続貂論である。 この語の最濃厚な利用圏内に成人した私の、先生のあの研究に、とりわけ深い恩恵を受けたことの感謝の心を、外の方々――たとへば金田一先生のやうなお人たちにも見て頂きたい。此心持ちは、先生には固より、にこやかにうべなうて貰へるものと考へるのである。 さかいに さかいで そやさかい――さうやさかい――系統の語の第一のめどになるそやと言ふ語は、勿
折口信夫
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