岸田国士 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私は、嘗て雑誌に発表した作品を、更に単行本に纏める場合、大概、一度は躊躇するのである。これは私に限らず、多くの作家はさうであらうが、時を経て読み返すと、自分の書いたものぐらゐつまらぬものはないからだ。 だがしかし、兎に角、本にしておきたい欲望もあるにはあつて、ひと通り、手を入れたり目次を考へたりする。私は、これで何冊目の戯曲集を出すことになるか、恐らく、今度くらゐ内容の取捨に迷つたことはない。 なぜかと云へば、私は、最近、いろいろな「試み」をやつてみて、それが「試み」としては相当の役目を果したと考へられるが、出来上つたものとしては、かなり純粋さを欠き、殊に自分のものになりきらない一種の「ぎごちなさ」が目立つて、誠に気恥かしいのだ。それでもそれを入れないと、私の近業といふ名目は立たないことになる。思ひ切つて、その二三を加へる決心をした。 「浅間山」は、当時あるところでも言つた通り、私が劇場側の希望により、「現在の職業俳優」に充てはめて書いたものである。しかし現在の職業俳優に充てはめて書くといふことは、その役柄を頭において人物を作り出すといふことだけでなく、現在の観客層に愬へるべく内容並び

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