岸田国士 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
橋本夫人 渥美登 静間氏 静間弓子 女中 東京の郊外――初冬――午後二時頃。 橋本家の奥座敷。 紫檀の机を囲んで座蒲団が四つ。 女中が火鉢に炭をついでゐる。 橋本夫人が現れる。 橋本夫人 その炭は跳ねるから、気をつけてね。女中 はい。橋本夫人 それから、きいちやんが、また、お玄関を泥だらけにしたよ。女中 はい。橋本夫人 (順々に座蒲団の上に坐つてみながら)ここが登さん、ここが静間さん、それから、ここがお嬢さんと……。(火鉢の中をのぞいて見て)いいから、さ、早くしないともう見える時分だよ。女中 はい。(十能を持つて去る)橋本夫人 (床の間の生花を手早く直したりなどする)女中 (現る)もうお見えになりました。橋本夫人 どなた? どちら……?女中 (わかつてはゐるが一寸口へ出ないといふ風に)あのう……。橋本夫人 いやな人だね。(かう云つて、急いで、玄関の方へ行く)橋本夫人の声 さあ、どうぞ……。お待ち致してをりました。いいえ、まだ……。あら、そんなことおよしになればいいのに……。(橋本夫人に続いて渥美登現る)渥美 (あたりを見廻し)なるほど……。橋本夫人 何がなるほ
岸田国士
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