岸田国士 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
拝復 別に新しい意見でもありませんが、小生の持論を要約します。 一、歌舞伎劇は旧きが故に、純化されたるが故に善いのであつて、これを現代向きに、或は、通俗的にしてしまつては切角の値打がなくなる。それ故、これを営利事業と結びつけることは歌舞伎劇のために甚だ危険である。若し、現在の観衆が、髷物をよろこぶと云ふなら、よろしく、歌舞伎劇から分離した大衆時代劇(既にこの種のものが所謂歌舞伎俳優によつて演ぜられてゐる)を与へるがよろしい。但し、純粋の歌舞伎俳優は、現代意識を盛つた大衆時代劇は演じ得まいと思はれる。 二、所謂新派劇こそは滅ぶべきである。文化的意義が全然ないからである。但し、新派俳優は滅んではならず、また、文字通り滅びはすまい。即ち、現在の新派俳優中、将来ある人々は、自然、所謂「新派臭」から脱して、現代の新鮮な空気を呼吸するであらう。さうすれば、その時は、もう新派俳優ではなく、現代劇俳優であり、新派劇今日の姿は都会から影を消すであらう。 三、新劇は、近き将来に於て、現代大衆劇(勿論文化的意義をもつ)と先駆的、純芸術的演劇とに分離しなければなるまい。これは勿論程度の問題であるが、一は職業的

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