岸田国士 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
新聞小説 岸田國士 新聞小説には殆ど経験がないといつてもいゝし、従つて自分でかうといふ野心を持つてゐるわけでもありませんけれども、自分だけの問題として考へれば、これからも新聞の小説を書いてみようといふ興味があるし、書くに就いては形式の上から云つても内容の上から云つても、自分が満足するだけでなく、非常に広い範囲にわたる読者へ相当興味の持てるやうなものをといふ事は自然考へてゐます。 で、その形式や内容から言つて極く広い読者層に訴へるやうな小説といふのは、結局現代の社会を作家としての自分の特殊な立場から見て、それにある程度の批判を加へたものでなければならない。一体に新聞の読者といふものが外の雑誌の読者と異つて、どういふ層を含んでゐるといふ事はこれは殆ど見究めがつかないと思ひます。新聞の種類などによつて多少見当のつく場合もありますが、更にその新聞の読者の中でどういふ種類の人達が毎日の続きものを読んでゐるかといふ事になると、これは殆ど現在の商業劇場の見物以上に多種多様であつて、一口に言へば同じものがある読者にとつては非常に面白く、ある読者にとつては非常につまらないといふやうな結果が明瞭に、そして

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