岸田国士 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
日本の新劇 岸田國士 現在いろいろな場合に新劇といふ言葉が使はれてをりますが、先日もある機会に、「新劇」とはなんぞやといふ質問が出ましたのに、この答へを当然用意してゐなければならない人々が、実はお互に顔を見合せて苦笑をした次第であります。 これを「新しい芝居」と云ひ直してみても、その「新しい」といふことが何処までの範囲を指すか問題になります。何時如何なる時代に於ても、新しいといふことはそれ自身に一つの魅力でありますから、多くの人の興味をそゝる上からも、芝居といふものは何等かの意味で新しい趣向を必要とするやうに考へられてをります。極端な場合には、旧いものでも、その旧さによつて世間から忘れられてゐるものなどは、やはり、一種の好奇心によつて、それが「新しい」ものとしての価値を生ずるやうな場合がなくもありません。 結局、さういふ意味では、芝居の世界に於ても、絶えず「新しい」ものが求められてゐたに相違なく、わが国伝来の歌舞伎劇の如きすら、長い伝統を通じて、ある変り方をして来たのであります。 ところが、今日、われわれの申す新劇とは、さういふ意味での新しさを指すのではありません。これを一口に申せば、

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