岸田国士 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私はこゝでこの作品の解説をするつもりはない。たゞ、中央公論七月号に発表した「速水女塾」は、原稿を渡したあとで、急に手を入れる気になり、可なり書き足したところもあつて、それを決定稿としたかつたのであるが、雑誌発行の都合でその希望は達せられず、やむなく旧稿のまゝ公表しなければならなくなつた関係上、すぐ追つかけて第二稿を単行本として出すことにしたことだけ、読者におことわりしておきたいと思ふ。従つて、雑誌発表の分は、作者としてはもう破棄してもよいものである。 ところで、かういふ経験は私にははじめてなので、ちよつとそのことに触れて私の感想を述べておきたいと思ふ。 従来も、雑誌の締切期日に追はれて、云はゞ未定稿にひとしいものを発表したことがないわけではない。さういふ場合、やはり気がかりで、いつか機会があれば手を加へるつもりでゐるのだが、ほとんどそれを果したことがない。上演の際、自分で稽古に立ちあふと、多少目に立つ欠点をなほしたくなるくらゐのものである。さういふわけで、私がこれまで雑誌に発表した戯曲は、比較的長いものほど、いつでも、全体として書き足りないといふ不満が最後まで残り、それをやはり、「雑誌

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