岸田国士 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
医師 どうも不思議だねえ。どこも、なんともないが、それでも痛むかね?患者 痛むかはひどいですよ、先生、このしかめつ面がわかりませんか!医師 もともとさういふ顔かと思つとつたよ。どれ、もう一度見せなさい。こゝだね、押へてちや駄目だ、手をどけなくつちや……。これで痛むかね? 痛む? どういふ風に痛むね?患者 いやだなあ、口で言へるやうなもんぢやありませんよ。なにしろ、なにがぶつかつたんだかわからないんですからね。外からか内からかもわからないですからね。医師 さうか。突然、急に痛み出したんだね。別に、誰もそばにやゐなかつたかね? 抓られでもしたんぢやないか?患者 先生、戯談はよして下さい。抓る相手がゐれや、それくらゐわかりますよ。それに、指なんていふ生やさしい感じぢやありませんからね。かう、刃物でゑぐられるやうな、錐を突き刺されるやうな、かうなんとも云へない……。医師 刃物も錐も使つた形跡はない。してみると、神経的なもんだ。患者 神経だと、どういふことになるんですい? お宅の専門ぢやないんですか?医師 いや、専門でないといふわけぢやないが、厄介だね。電気でもかけてみるか。患

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