北大路魯山人 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
鰻の話 北大路魯山人 私は京都に生まれ、京都で二十年育ったために、京、大阪に詳しい。その後、東京に暮して東京も知るところが多い。従って批判する場合、依怙贔屓がないといえよう。うなぎの焼き方についても、東京だ大阪だと片意地はいわないが、まず批判してみよう。 夏の季節は、どこも同じように、一般にうなぎに舌をならす。従ってうなぎ談義が随所に花を咲かせる。うなぎ屋もこの時とばかり「土用の丑の日にうなぎを食べれば健康になる」とか「夏やせが防げる」とかいって、宣伝にいとまがない。 一般的に、食欲の著しく減退しているこの時期に、うなぎがもてはやされるというのは、うなぎが特別扱いに価する美味食品であることに由来しているようだ。だが、ひと口にうなぎといっても、多くの種類があり、良否があるので、頭っからうなぎを「特別に美味いもの」と、決めてかかるのはどうだろうか。 ここで私のいわんとする美味いうなぎとは、いわゆる良質うなぎを指すのである。「美味い」ということは、良質のものにのみいえることであって、食べてみて不味いうなぎをよいうなぎとはいわないだろう。その上、不味いものは栄養価も少ないし、食べても跳び上がる
北大路魯山人
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