北大路魯山人 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
先日、ある雑誌記者来訪、「ものを美味く食うにはどうすればいいか」とたずねた。 世の中には、ずいぶん無造作に愚問を発する輩があるものだ。思うにこういうふうなものの聞き方をする連中は、その実、料理など心から聞きたいわけではないに決っている。お役目で人の話を聞こうとするが、もとより真から聞きたいのではない。そこで私は言下に「空腹にするのが一番だ」と答えてみた。その男は、しばし二の句が継げずにいた。 また、これも似たような話であるが、ある時、一流料理人を求めた際、メンタルテストをして、君の好きなものはなにか? と、質問してみた。すると、ただ漠然と「さかなが好きです」と答えた。 専門の一流料理職人が、こういうことでは困る。得てして料理職人にはこんなのが多い。この男は上方の人間だから、さかなというのはたいを指して言ったものだろう。たしかに関西のさかなは美味い。が、表現に教養がなさすぎる。子どもに向かって、「坊やどこへ行くの」と聞くと、「アッチ」と答えるのと同じである。 もちろん、こんなのは落第させてしまったが、こういう男は自分がなにが好きであるかさえ正直に言えないのみならず、実のところ、美食にまる
北大路魯山人
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