北大路魯山人 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
良寛の書には、不肖ながら私も心の底から惚れこんで、一通り見られるだけのものは、百点位見た積りである。 その経験でいうと、良寛様とて未熟時代があって、若かりし頃の書(屏風に書かれている書の時代まで)は、別段のこともないが、後年六十歳頃にもなられてからは、俄然妙境に入り、殊に尺牘の如きは、まことにたまらないまでのものである。唐または唐以前の書に着目して学んだ跡の歴々としたものがあり、彼の書道における眼の利き方、見識の高さを示して余りあるものがある。 羲之を学んで能書の聞こえ高かりし物徂徠(荻生徂徠)の如きも過去にもあるにはあるが、良寛の如き美しき芸術性は具わらず、超凡というところまでは行かなかった。この点、流俗的に書家風を逐う徂徠は、良寛のように習書から離れ脱しきることはできなかった。ただ一般の儒者たちに比して見る時、力強く勝っているに過ぎなかった。その点、まことに良寛は達人芸であり、達人趣味である。 道風の「秋萩帖」に学んだ跡も見られるが、「秋萩帖」以上に美しい。徳川末期の書が道風という古い時代の名人に優っているなぞということは、実にとんでもないことである。このような奇蹟は他に類例を見な
北大路魯山人
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