北村四海 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
頭上の響 北村四海 「君、如何だ、近頃は不思議が無いか」 私の友人は、よく私にこういうて笑うが、私には如何してもそれが冗談として打消されない、矢張何か一種の神秘作用としか思われないのである、如何いうものか吉兆の方は無い――尤も私の今日までの境遇上からでもあろうが――が奇妙に凶事に関しては、事件の大小を論せず、必ず自分には前報がある、遅いのは三四日前、早いのは一年も二年も以前にちゃんと解る、如何して知れるというと、即ち自分の頭の真上で何か響があるのだ、それにまた奇妙なのは、事件が大きければ大きいほど、響も大きいといった風で、瑣細な凶事が起る時などは、丸で何か爪の先で爬く様な微かな音がする、他人がもし傍に居ればその人にも聞えるそうだ、私はこういう仕事をしているから、もしそういう響を聞けば、直に家人は勿論、門弟一同に深く注意を与えて、前以て種々予防を為る、幸いそれで何も起らない場合もあるが、多くは何処か眼の届かなかった処とか、如何しても避けられぬ事、例えば他人から預っておいた彫刻品が、気候の為めに欠損が出来たとかいう様な、人力では、如何にも致方の無い事が起るのである、この談をすると、よく友人
北村四海
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