木下杢太郎
木下杢太郎 · 일본어
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木下杢太郎 · 일본어
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원문 (일본어)
市街を散歩する人の心持 木下杢太郎 東京の市街を、土曜日の午後あたり、明日は日曜だといふ安心で、と見かうみ、ぶらぶら歩るくほど楽しみなものはない。たとへば神田の五軒町あたりは、広い道の両側に柳の並木、日にきらめける鉄条の上をけたたましい電車の嵐、と思つて一寸道傍の店先を覗くと赤く汚れた温い硝子戸を越してお七、吉三の古い錦絵、その隣を乳房をあらはに髪を梳る女、銘は何れも歌麿筆としてある。 全体が青い調子の横に長い方形の景色絵がある。広重といふ落款で鳴海の景とある。代赭の色の、はた白に浅葱の縞模様、特産の鳴海綾は並び立つ太物屋の軒に吊り下つてゐる。その前の街道をば荷を付けた馬が通る。旅人めく一群の人が通る。 古い錦絵の包蔵した情調は音楽の如く散歩する人の心を襲ふ。一種の譬へ難き哀愁が胸の底に涌く。その絶ち難い愛着を捨てて猶も歩を進めてゆくと、思ひがけなくも一列の赤い郵便馬車の駆け来るのに出遇ふ。今得たまどかな気分は忽ち破壊せられたので、不安の眸を放つて、市街ををちこちと見廻はしてゐると、斜日に照らされて、夢の如く浮び出てゐるニコライの銀灰の壁が目に入る……神田の古風な大時計がぢん、ぢん……
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木下杢太郎
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