国枝史郎
国枝史郎 · 日本語
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国枝史郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
一 「小豆島紋太夫が捕らえられたそうな」 「いよいよ天運尽きたと見える」 「八幡船の後胤もこれでいよいよ根絶やしか。ちょっと惜しいような気もするな」 「住吉の浜で切られるそうな」 「末代までの語り草じゃ、これは是非とも見に行かずばなるまい」 「あれほど鳴らした海賊の長、さぞ立派な最期をとげようぞ」 摂津国大坂の町では寄るとさわると噂である。 当日になると紋太夫は、跛の馬に乗せられて、市中一円を引き廻されたが、松並木の多い住吉街道をやがて浜まで引かれて来た。 矢来の中へ押し入れられ、首の座へ直ったところで、係りの役人がつと進んだ。 「これ紋太夫、云い遺すことはないか?」作法によって尋ねて見た。 「はい」と云って紋太夫は逞しい髯面をグイと上げたが、「私は、海賊にござります。海で死にとうござります」 「ならぬ」と役人は叱した。 「その方以前何んと申した。海を見ながら死にとうござると、このように申した筈ではないか、本来なれば千日前の刑場で所刑さるべきもの、海外までも名に響いた紋太夫の名を愛でさせられ、特に願いを聞き届けこの住吉の海辺において首打つ事になったというは、一方ならぬ上のご仁慈じゃ。今
国枝史郎
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