小泉信三 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
今の東宮仮御所のある渋谷常盤松の辺は、土地がゆるやかに起伏し、道路が不整な線をなしてその間にうねっている。幾つかの凸凹の一凸部の端に仮御所はある。もと東伏見大妃殿下のおられた天井の高い旧式の洋館である。 食堂に下りて来られる以外、皇太子殿下は主にその二階にお住居になっている。東に面して三つの部屋が並んでいる。御進講堂、御座所(書斎)、そうして「ピアノの間」である。ピアノの間といっても別に音楽室ではない。ただ壁に寄せて直立ピアノが置いてあるところから、内舎人たちが便宜上そう呼びならわしただけで、実質は客間または談話室である。両陛下がお出でになったときもここへお通りになるし、殿下が外国使臣にお会いになるのも、ここである。私が毎週殿下と御一緒に本を読んだり、様々のお話をするのも、何時かこの御部屋でする慣わしになった。 部屋の大きさは二十畳位であろうか。格別に大きな安楽椅子や長椅子が置いてあるので、割合狭く見える。入って右(南)側の壁に寄せて電蓄とレコードの函、そのレコードの函の上にモーニングの陛下、和服の皇后陛下の何れも七分身ほどの御写真が立てられ、斜めにそれに対する位置に、王冠を着け、笏を
小泉信三
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
この著者の他の作品
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。