甲賀三郎
甲賀三郎 · 日本語
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冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
秘密の上にも秘密にやった事だったが、新聞記者にかゝっちゃ敵わない、すぐ嗅ぎつけられて終った。 子爵二川重明が、乗鞍岳の飛騨側の頂上近い数百町歩の土地を買占めただけなら兎に角、そこの大雪渓を人夫数十人を使って掘り始めたというのだからニュース・ヴァリュ百パーセントである。 二川家は子爵の肩書が示している通り、大名としては六七万石の小さい方だったが、旧幕時代には裕福だった上に、明治になってからも貨殖の途が巧みだったと見えて、今では華族中でも屈指の富豪だった。然し、当主の重明は未だやっと二十八歳の青年で、事業などにはてんで興味がなく、帝大の文科を出てからは、殆ど家の中にばかり閉じ籠っているような、どっちかというと偏屈者だったが、それが何と思ったか、三千メートル近い高山の雪渓の発掘を始めたのだから、新聞が面白可笑しく書き立てたのは無理のないことである。 二川重明の唯一の友人といっていゝ野村儀作は重明と同年に帝大の法科を出て、父の業を継いで弁護士になり、今は或る先輩の事務所で見習い中だが、この頃学校時代の悪友達に会うと、直ぐ二川重明の事でひやかされるのには閉口した。 野村の悪友達は、二川の事を野村
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