幸徳秋水 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
筆のしづく 幸徳秋水 一 近日何ぞ傷心の事多きや、緑雨は窮死し、枯川は絏紲の人となる、風日暖にして木々の梢緑なる此頃の景色にも、我は中心転た寂寞の情に堪へず、意強き人は女々しと笑はん、我は到底情を矯むるの力なし。 緑雨は病めりき、左れど彼の死せるは病めるが為めに死せるにはあらず、病を養ふ能はざるが為めに死せるなり、繰返していふ、緑雨の死せるは病ありしが為めにあらず、金なかりしが為めなり。 彼は心やさしく、友に厚かりき、左れど今の世に処せんには彼は余りに正直なりき、余りに男らしかりき、彼は常に曰へらく、「我は武士の子なり」と、然り彼の気質は余りに武士らしかりき、故に餓えたり。 彼は紅葉君の如く落合直文君の如く、若くば広瀬中佐君の如く、葬式の盛大なることに依りて、其死後を栄せらるゝ程の個人的勢力を有せざりき、又有せんとも願はざりき、彼は文士にして交際家にはあらざりき、去月十六日彼れの知人、駒込の寺に集まりて葬式を挙行すと聞えたり、聊かにても緑雨を知れりと信ずる我は行くに忍びざりき。 廿一日午後一時、枯川の入獄を送る、日比谷公園を通り抜くれば此処彼処笑語の声うれしげなり、裁判所の石階を上れば
幸徳秋水
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