ゴーリキーマクシム
ゴーリキーマクシム · 日本語
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ゴーリキーマクシム · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
島は深い沈黙の中に眠つてゐる。海も死んでゐるかと思はれるやうに眠つてゐる。秘密な有力者が強い臂を揮つて、この怪しげな形をした黒い岩を、天から海へ投げ落して、その岩の中に潜んでゐた性命を、その時殺してしまつたのである。 遠くから此島を見れば妙な形をしてゐる。遠くからと云ふのは、天の川の黄金色をした帯が黒い海水に接した所から見るのである。そこから見れば、此島は額の広い獣のやうである。獣は曲つた毛むくじやらな背をしてゐる。それが恐ろしい顎を海にぺたりと漬けて、音も立てずに油のやうに凝つた水を啜つてゐるかと思はれる。 十二月になつてからは、今宵のやうな、死に切つた静けさの闇夜が、カプリの島に度々ある。いかにも不思議な静けさなので、誰でも物を言ふに中音で言ふか囁くかせずにはゐられない。若し大きい声をしたら、この天鵝絨のやうな青い夜の空の下で、石の如き沈黙を守つて、そつと傍観してゐる何物かの邪魔をすることにならうかと憚るのである。 だから今島の浪打際の、石のごろ/\した中にすわつてゐる二人も中音で話をしてゐる。一人は税務署附の兵卒である。黄いろい縁を取つた黒のジヤケツを着て、背に小銃を負つてゐる。
ゴーリキーマクシム
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