小島烏水 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
山を讃する文 小島烏水 近来邦人が、いたづらなる夏期講習会、もしくは無意義なるいはゆる「湯治」「海水浴」以外に、種々なる登山の集会を計画し、これに附和するもの漸く多きを致す傾向あるは頗る吾人の意を獲たり、しかも邦人のやや山岳を識るといふ人も、富士、立山、白山、御嶽など、三、四登りやすきを上下したるに過ぎず、その他に至りては、これを睹ること、宛ら外国の山岳の如くなるは、遺憾にあらずや。 例へば東京最近の山岳国といへば、甲斐なるべくして、しかも敢へて峡中に入り、峻山深谿を跋渉したるもの幾人かある、今や中央鉄道開通して、その益を享くるもの、塩商米穀商以外に多からずとせば、邦人が鉄道を利用するの道もまた狭いかな、偶ま地質家、山林家、植物家らにして、これらの人寰を絶したる山間谿陰に、連日を送りたるものあるは、これを聞かざるにあらずといへども、しかもかくの如きはこれ、漁人海に泛び、樵夫山に入ると同じく、その本職即ち然るのみ、余の言ふところの意はこれに異なり、夏の休暇は、衆庶に与へられたる安息日なり、飽食と甘睡とを以て、空耗すべきにあらず、盍くんぞ自然の大堂に詣でて、造花の威厳を讃せざる、天人間に横
小島烏水
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