今野大力 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
もったいない事である 肺患者の残した 実に多量の食物は惜し気もなく捨てられる 鮭の照焼や筍やうどふきのうま煮なんか 多くの人々にとって 大した御馳走なんだのに 一椀の飯さえ思うように喰えぬ人々が見たら おおめまいしてしまいそうな 食物の山山 近所の豚がこの滅多に人間さえ食べないものを うんと腹一杯たべてコロコロに肥っている 豚が肥えて肉屋に並べられても それが何とか西洋料理支那料理になっても 豚の食う程のものすら喰えぬ人間に なんでそれを一口食べられようか もったいないことである 貧乏な患者に附添う老爺は 自分の患者のたべないものを こっそりかくしておく そしてあとで 自分がそれを喰べる 一日四十五銭の附添食費を浮ばせるために だが、若しこれが、病院の誰かに発見されたら 何といって叱られるか 何といっておどかされるか 恐怖に戦き食べる老爺は毎日下痢をやっている。 五・二〇 ●図書カード
今野大力
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