佐々木邦 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私立中学校の同窓生懇親会である。卒業生は在学生と違って時間を守る責任を感じない。学校当局もそれを見越して五時に始めるところを謄写版の案内状には四時と書いた。それでも定刻少し過ぎると薄汚い校舎の一室が活気を呈し始めて、 「やあ、スパローが来ているな」 「うん、然ういうお前は虎公かい? 変りやがったなあ!」 「驚いたよ」 「おれも変ったかい?」 というような原始的の挨拶が彼方此方で交換された。直ぐに十年でも二十年でも後戻りをするところが昔馴染の貴い所以である。 「君は大分禿げたね?」 「これは親譲りで馬鹿に早いんだが、君だって額が広くなったぜ」 「然うかな?」 「皆もう多少来ている。内海君を見給え。僕よりもひどいや」 「成程、お互に年を取ったんだね」 と歎息するものもあった。紅顔の少年で別れて再び相見れば、或ものは既に髪が薄くなっている。 「皆親父になっちゃったんだな。君は何人だい?」 「僕は四人あるよ。又生れるから目下四人半さ。君は?」 「僕も四人だったが、去年一人亡くした」 「それは/\」 「草間君は何うだい?」 「僕か? 僕はその方は晩学で未だ半だよ」 「半か? いつ結婚したんだい?
佐々木邦
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