佐左木俊郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
集落から六、七町(一町は約一〇九メートル)ほどの丘の中腹に小学校があった。校舎は正方形の敷地の両側を占めていた。北から南に、長い木造の平屋建てだった。 第七学級の教室はその最北端にあった。背後は丘を切り崩した赤土の崖だった。窓の前は白楊や桜や楓などの植込みになっていた。乱雑に、しかも無闇と植え込んだその落葉樹が、晩春から初秋にかけては真っ暗に茂るのだった。その季節の間はしたがって、教室の中も薄暗かった。そして、すぐその横手裏は便所になっていた。だから、生徒たちはこの教室の付近にはほとんど集まらなかった。いつも運動場の南の隅から湧き起こる生徒の叫びを谺している、薄気味の悪い教室だった。 受持ちは鈴木という女教員だった。 鈴木教員は独身で若かった。彼女は優しい半面にいかめしい一面も持っていた。晴天の日の休みの時間中、決して生徒を教室の中に置くようなことはなかった。そして、それは尋常五年の従順な女生徒たちによって容易に実行されたのだった。 しかし、鈴木教員はなおも忠実に、休業の鐘が鳴ってちょっと教員室に引き揚げていってからすぐまた、自分の受持ち教室の見回りに引き返してくるのが例だった。間のも
佐左木俊郎
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