島崎藤村
島崎藤村 · 日本語
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島崎藤村 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
一 私の子供が初めて小學校へ通ふやうに成つた其翌日から、私は斯の手紙を書き始めます。昨日の朝、吾家では子供の爲に赤の御飯を祝ひました。輝く燈火の影に夜更しすることの多い都會の生活の中でも、子供ばかりは夜も早く寢、朝も早く起きますから、弟の方も兄と一緒に早く床を離れました。兄は八歳、弟は六歳に成ります。お人好しの兄に比べると弟はなか/\きかない氣で、玩具でも何でも同じ物が二つなければ承知しないといふ風です。ところが其朝に限つて、兄の方には新しい鞄や、帽子や、其他學校用のものが買つて宛行はれてあるに引きかへ、弟のためには子供持の雨傘と、麻裏草履としか有りません。弟は地團駄踏んで、ぐづり始めました。兄と一緒に朝の膳に對つても、兄が晴々しい顏附で赤の御飯をやつて居る側で、弟は元氣もなく、不平らしく萎れて、不承々々に箸を執り始めました。そのうちに不圖思ひ附いたやうに、食事中自分の膳を離れて、例の新しい雨傘を取りに立つて行きました。それを大事さうに自分の膳の側に置いて、それから復た食ひ始めました。家のものが皆な可哀さうに思つて笑ふと、弟は自分の爲たことを嘲り笑はれたと思つたかして、やがてその雨傘を
島崎藤村
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