杉田久女
杉田久女 · 日本語
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杉田久女 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
万葉の手古奈とうなひ処女 杉田久女 或日私は沈丁花の匂ふ窓辺で万葉集をひもどいてゐる中、ふと高橋虫麿の葦屋の菟名負処女の墓の長歌に逢着して非常な興味を覚えたのである。 人も知る如く虫麿は、かの水江浦島子や、真間の手児名や、河内大橋を独り渡りゆく娘子等をよんで、集中異彩を放つ作家であるが、此うなひ処女の一篇はことにあはれ深いものである。 手を翻せば雲となり、手を覆へば雨となる、萍の如き現代人はかうした古めかしい心情を鼻先で笑ふであらうが、古典ずき万葉ずきの私にとつては、まことにうなひ処女の純情がなつかしい。 吾妹子が母に語らく、倭文手纏賤しき我が故、ますらをの争ふ見れば、生けりとも逢ふべくあれや、 ししくしろ黄泉に待たむと、隠沼のしたばへおきて、打ち嘆き妹が去ぬれば―― のあたり一篇の戯曲をよむ様で、息をもつかせぬ面白さである。 葦の屋のうなひ処女のおくつきを往来と見れば音のみし泣かゆ。 葛飾の真間の井見れば立ちならし水汲ましけむ、手児名し思ほゆ。 手児奈や、うなひ処女が死をえらんだ純情。青丹よし奈良の都の桜を愛し、萩の野趣をめで、梅花の清香をめづる万葉歌人の純情は、つねに私の詩魂を深く
杉田久女
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