竹内浩三 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
戦死やあわれ 兵隊の死ぬるやあわれ とおい他国で ひょんと死ぬるや だまって だれもいないところで ひょんと死ぬるや ふるさとの風や こいびとの眼や ひょんと消ゆるや 国のため 大君のため 死んでしまうや その心や 苔いじらしや あわれや兵隊の死ぬるや こらえきれないさびしさや なかず 咆えず ひたすら 銃を持つ 白い箱にて 故国をながめる 音もなく なにもない 骨 帰っては きましたけれど 故国の人のよそよそしさや 自分の事務や 女のみだしなみが大切で 骨を愛する人もなし 骨は骨として 勲章をもらい 高く崇められ ほまれは高し なれど 骨は骨 骨は聞きたかった 絶大な愛情のひびきを 聞きたかった それはなかった がらがらどんどん事務と常識が流れていた 骨は骨として崇められた 骨は チンチン音を立てて粉になった ああ 戦場やあわれ 故国の風は 骨を吹きとばした 故国は発展にいそがしかった 女は 化粧にいそがしかった なんにもないところで 骨は なんにもなしになった ●図書カード
竹内浩三
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