太宰治
太宰治 · 日本語
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太宰治 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
田中君の作品に就いてよりも、まづ田中君の人間に就いてお知らせして置いたはうが、いまは、必要なやうに思ひますから、そのはうだけを、少し書きます。 この創作集の末尾に、田中君が跋文を書き添へてゐるやうですが、それに據れば、「俺の過去は醜惡で複雜、まともに語れるものではない。この醜くさは、顏が赧くなつて脇の下から冷汗ものだ、などといふ體裁の好いものではなかつた筈だ。」と慚愧に轉倒してゐるやうでありますが、それは田中君の主觀であつて、何も君そんなに下品がらなくてもいいぢやないか、と私は言ひたくなりました。 田中君は、私などに較べて、ずつと上品な、氣の弱い、しかも誰よりも正直な人間であります。御母堂に、ずゐぶん可愛がられて育ちました。 四年ほどまへ、私がまだ、荻窪の下宿にゐた頃の事でありましたが、田中君の御母堂が私の下宿に怒鳴り込んで來たさうであります。運よく私は、その時、外出してゐたので難をのがれましたが、私の代りに下宿のをばさんが、大いに叱られたさうであります。うちの英光に文學などをすすめて、だらくさせるつもりだらう、とおつしやつて、實に怒つてお歸りになりました、こはいお母さんですねえ、と下
太宰治
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