太宰治 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
デカダン抗議 太宰治 一人の遊蕩の子を描写して在るゆえを以て、その小説を、デカダン小説と呼ぶのは、当るまいと思う。私は何時でも、謂わば、理想小説を書いて来たつもりなのである。 大まじめである。私は一種の理想主義者かも知れない。理想主義者は、悲しい哉、現世に於いてその言動、やや不審、滑稽の感をさえ隣人たちに与えている場合が、多いようである。謂わば、かのドン・キホオテである。あの人は、いまでは、全然、馬鹿の代名詞である。けれども彼が果して馬鹿であるか、どうかは、それに就いては、理想主義者のみぞよく知るところである。高邁の理想のために、おのれの財も、おのれの地位も、塵芥の如く投げ打って、自ら駒を陣頭にすすめた経験の無い人には、ドン・キホオテの血を吐くほどの悲哀が絶対にわからない。耳の痛い仁も、その辺にいるようである。 私の理想は、ドン・キホオテのそれに較べて、実に高邁で無い。私は破邪の剣を振って悪者と格闘するよりは、頬の赤い村娘を欺いて一夜寝ることの方を好むのである。理想にも、たくさんの種類があるものである。私はこの好色の理想のために、財を投げ打ち、衣服を投げ打ち、靴を投げ打ち、全くの清貧に
太宰治
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。