立原道造 · 日本語
全文
原文 (日本語)
かなしみではなかつた日のながれる雲の下に
僕はあなたの口にする言葉をおぼえた、
それはひとつの花の名であつた
それは黄いろの淡いあはい花だつた、
僕はなんにも知つてはゐなかつた
なにかを知りたく うつとりしてゐた、
そしてときどき思ふのだが 一体なにを
だれを待つてゐるのだらうかと。
昨日の風は鳴つてゐた、林を透いた青空に
かうばしい さびしい光のまんなかに
あの叢に咲いてゐた、そうしてけふもその花は
思ひなしだか 悔ゐのやうに――。
しかし僕は老いすぎた 若い身空で
あなたを悔ゐなく去らせたほどに!
●図書カード
立原道造
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