田中貢太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
狐と狸 田中貢太郎 燕の恵王の墓の上に、一疋の狐と一疋の狸が棲んでいた。二疋とも千余年を経た妖獣であったが、晋の司空張華の博学多才であることを知って、それをへこますつもりで、少年書生に化けて、馬に乗って出て往こうとすると、華表神が呼び止めて、 「君達はどこへ往くのか」 と聞いた。華表神とは墓の前にある鳥居の神である。狸は華表神の問いに答えて、 「司空の張華と、議論しに往くところだ」 と言った。すると華表木の精が、 「張司空は才人であるから、二人が命を失うばかしでなく、その禍が俺たちにもかかってくる、どうかやめてくれ」 と言ったが、狸と狐は聞かずに出かけて往った。 そして二疋で、張華の処へ往って、張華に逢って議論をはじめたが、その議論にはさすがの張華も弱らされた。張華はこの少年たちはどうしても人間でないから、化けの皮を剥いでやろうと考えていると、知合の雷孔章という者がやってきた。張華は雷孔章の顔を見ると、 「怪しい書生が二人来ている」 と言って話した。雷孔章は、 「君は国の棟梁で、賢者を薦め、不肖者を退けている人じゃないか、自個より議論が偉いといって、妖怪あつかいにするは怪しからん、しか
田中貢太郎
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