田中貢太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
嬌娜 田中貢太郎 孔雪笠は、孔子の子孫であった。人となりが風流で詩がうまかった。同じ先生に就いて学んでいた気のあった友達があって天台県の令となっていたが、それが手紙をよこして、来いと言ってきたので、はるばる往ったところで、おりもおりその友達の県令が亡くなった。孔生は旅費がないので帰ることもできず、菩陀寺という寺へ往って、そこの僧に傭われて書き物をした。 その寺の西の方四百余歩の所に単先生という人の邸宅があった。単先生はもと身分のある人の子であったが、大きな訴訟をやって、家がさびれ、家族も寡いところから故郷の方へ移ったので、その邸宅は空屋となっていた。 ある日、大雪が降って人どおりの絶えている時、孔生がその家の前を通っていると、一人の少年が出てきたが、その風采がいかにもあかぬけがしていた。少年は孔生を見ると趨ってきてお辞儀をした。孔生もお辞儀をして、 「ひどく降るじゃありませんか」 と言うと、少年は、 「どうかすこしお入りください」 と言った。孔生は少年の態度が気にいったので自分から進んで従いて入った。 家はそれほど広くはなかったが、室という室にはそれぞれ錦の幕を懸けて、壁の上には古人の
田中貢太郎
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