田中貢太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
黄英 田中貢太郎 馬子才は順天の人であった。その家は代々菊が好きであったが、馬子才に至ってからもっとも甚しく、佳い種があるということを聞くときっと買った。それには千里を遠しとせずして出かけて往くという有様であった。 ある日、金陵の客が来て馬の家に泊ったが、その客が、 「自分のいとこの家に、佳い菊が一つあるが、それは北の方にはないものだ」 と言った。馬はひどく喜んで、すぐ旅装を整えて、客に従いて金陵へ往ったが、その客がいろいろと頼んでくれたので、二つの芽を手に入れることができた。馬はそれを大事にくるんで帰ってきたが、途の中ほどまで帰った時、一人の少年に逢った。少年は驢に乗って幕を垂れた車の後から往っていたが、その姿がきりっとしていた。だんだん近くなって話しあってみると、少年は自分で陶という姓であると言ったが、その話しぶりが上品で趣があった。そこで少年は馬の旅行しているわけを訊いた。馬は隠さずにほんとうのことを話した。すると少年が言った。 「種に佳くないという種はないのですが、作るのは人にあるのですから」 そこでいっしょに菊の作り方を話しあった。馬はひどく悦んで、 「これから何所へいらっし
田中貢太郎
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