谷譲次
谷譲次 · 日本語
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谷譲次 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
1 私が、その希臘人の友達を Roger & Gallet と呼び出したのは、彼がこの巴里化粧品会社の製造にかかる煉香油を愛用して、始終百貨店の婦人肌着部のようなにおいを発散させながら、サン・モリッツのホテルの廊下を歩いていたことに起因する。 だから私は、私のいわゆるロジェル・エ・ギャレ氏の本名は知らないのだが、それはすこしもこの話の現実的価値を低めはしないと信ずる。なぜなら、私は、彼の名前こそ知らないが、彼がオスロかどこか北方の首府に仕事と地位を持っている希臘の若い海軍武官であることも、いつも小さな秤を携帯していて、それで注意深くフィリップ・モウリスの上等の刻煙草を計って、自分で混ぜて、晩餐後の張出廊で零下七度の外気へゆっくりと蒼い煙を吹き出す習慣のあることも、例の大陸朝飯――珈琲・巻麺麭・人造蜂蜜・インクの香の濃い新聞・女中の微笑とこれだけから構成されてる――を極度に排斥して、BEEFEXと焼林檎と純白の食卓布に固執していることも、趣味として部屋では真紅のガウンを着ていることも、いまはバルビウスの“Thus and Thus”を読んでいることも、そして、実を言うと、それよりも巴里版
谷譲次
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