種田山頭火 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
赤い壺(二) 種田山頭火 自分の道を歩む人に堕落はない。彼にとっては、天国に昇ろうとまた地獄に落ちようとそれは何でもない事である、道中に於ける夫々の宿割に過ぎない。 優秀な作品の多くは苦痛から生れる。私は未だ舞踏の芸術を解し得ない。私は所謂、法悦なるものを喋々する作家の心事を疑う。此意味に於て、現在の私は『凄く光る詩』のみを渇望している。 涙が涸れてしまわなければ、少くとも涙が頬を流れないようにならなければ、孤独の尊厳は解らない。 ほんとうに苦しみつつある人は、救われるとか救われたいとかいうことを考えない。そういう外的な事を考えるような余裕がないのである。 空には星が瞬たいている。前には海が波打っている。曙を待つ私の心は暗い。この暗さの中で私の思想は芽吹きつつある。私は悩ましい胸を抑えて吐息を洩らしている。その吐息の一つ一つが私の作品である。 夜は長いであろう。しかし夜はいかに長くても遂には明けるであろう。明けざるをえないであろう。闇の寂しさ恐ろしさに堪えて自己を育てつつある人の前には、きっと曙が現われて来る。 同情したからとて涙を流す勿れ、同感だといって手を拍つ勿れ。心と心とのつなが
種田山頭火
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