田山花袋 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
最近五六年間に書いた小品を集めて『椿』といふのは、別に意味のあることではない。丁度それを輯めようとする頃、椿の花が殊に私の眼に附いたからである。私は丁度其時友人のフランスに立つのを送つて、箱根まで行つた。国府津、酒勾、鎌倉の海岸には、葉の緑に、花の紅い野椿が到る処に咲いてゐて、それが降りしきる雨の中にはつきり見えてゐた。私は南国の春を想像した。椿油の出来る島々のことなどを思つた。それに、私の庭にも、椿の花が多い。父親の遺愛のものなどもある。私が書斎で筆を執つてゐると、をり/\花の落ちる音が重く聞えたりする。春の花の中で椿の花の印象が私にはかなりに多い。で、『椿』といふ名を此輯に得ることになつた。 大正二年四月著者 ●図書カード
田山花袋
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。