田山花袋 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
若い人達のためには、私は第一に勉強することを勧める。しかし勉強と言つても書くことばかりではない。読書すること、見学すること、論議すること、すべてそれを指して言つてゐるのである。若い頃にはいくらあせつても、実人生のことには容易に本当に触れ得るものではないのである。父母兄弟、叔父伯母、さういふものの中にその一部を発見するにはしても、十分にそれを理解することは出来ないものである。従つて余りに年若くて、実人生に触れるといふことは、決して好いことでも幸福なことでもない。むしろ早く触れたがために、却つてその発達が小さくなつて了ふやうな場合がよくある。『あまり早く世間に出たのがわるかつたのだ……。そのために、あの人は平凡になつて了つた……』かうした言葉を私はよく耳にする。 私の考では、実人生に打突かるのは、成るたけ遅い方が好い。遅ければ遅いほど好いと言つても好いくらゐである。私は二十五六になつて初めて実際に目を向けたといふやうな青年を愛する。性の目覚が若い人達を無茶に実人生に駆つて行かせるやうな形を私はよく知つてゐるけれども、それはぢつと抑へてゐなければならないものである。若い人達には力強くそれを抑
田山花袋
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