濤音 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
まがどりのやうな冠船が翼をひろげて 那覇港内にしやんで居るうちは 薩摩の殿にはあへまいわなあ。 凛々しい殿のかみしも姿が眼の前に まざまざと浮んでくるやうな。― 殿はいま露つぽい美里間切を深編笠のしのびあるき。 あゝなさけない世となつた。 ついあけがたまでなつかしい殿御と 添寝の夢の名残は室の隅にも残れど。 うらめしい開門鐘に空が白むと むつくり起きあかりて仰せらるゝ 「さらばかめイしばらくは待つてくれ。」 「妾もついてゆきます」と申すと 「これが邪魔する」とはつたと叩れた腰の朱鞘。 そうしててしやで染のわか小指をにぎられたが。 はてなさけない世となつた。 膏脂 香 息のつまりさうな唐人と どうして添寝ができませうか。 ●図書カード
濤音
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