豊島与志雄
豊島与志雄 · 日本語
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豊島与志雄 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
バラック居住者への言葉 豊島与志雄 バラックに住む人々よ、諸君は、バラックの生活によって、云い換えれば、僅かに雨露を凌ぐに足るだけの住居と、飢渇を満すに足るだけの食物と、荒凉たる周囲の灰燼と、殆んど着のみ着のままの自分自身と、其他あらゆる悲惨とによって、初めて人間の生活というものを、本当に知ったに――感じたに違いない。 普通の生活に於ては、諸君の大部分は、生活というものをしみじみと味うことが、可なり少なかったことであろう。金銭や名誉は勿論、其他のいろんな事柄が、諸君の面前に、余りにまざまざと掲げられていたために、自分の生活を本当に感じ味うだけの余裕が、諸君には可なり欠けていたことであろう。所が此度の災禍によって、諸君の眼を惹きつけていたそれら外的な旗幟が、一度に消し飛ばされて、もはや眼を遮るものは何もなくなり、そして諸君の眼はじかに、己の生活の上に据えられたことであろう。 そして諸君は、其処に何を見て取ったか。 その一つは、家庭というものだったに違いない。 家庭――この言葉を吾々は平素余り無責任に取扱いすぎていた。然しながら、今や諸君の眼には、新らしい光に輝らし出された家庭というものが
豊島与志雄
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