中井正一 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
聴衆0の講演会 中井正一 夢のような終戦、疎開先から帰る荷馬車のほこりっぽい街、内海の潮の香のただよう尾道市の図書館の暗い部屋で、私は、何となく「暗澹」という文字を胸に書いてみた。 何処から、このごみごみした尾道市に、文化運動として、手をつけてよいのか。 十月四日治安維持法が断ち切られて最初の日曜日、十月七日、私はやむにやまれぬ心持でまず講演会を開いたのであった。日曜日の毎週朝九時からは学生を対象として、水曜日の午後二時からは一般婦人を対象として、二つの講演会と、金曜日の午後一時からは座談会を計画した。日曜日のテーマは「微笑」、金曜日のテーマは「東方の美」であった。 昭和十二年に反戦論者の疑いで弾圧をうけてより、同じく十六年に自由の身となってより、二十一年までは、予防拘禁におびやかされ通したこの十年の後に、はじめて、あたりまえのことを自由に語れることは、瞳孔がしまるほどの眩めくような明るい軽いおもいであった。たまりにたまった思いは、せきあえぬほどに口にあふれて出て来た。恐らく、独りで勝手にしゃべっていたに違いない。二時間位ずつぶっつづけてやっていた。初めの聴衆は二十人位いた。しかし、だ
中井正一
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。