永井荷風 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
申訳 永井荷風 昭和二年の雨ばかり降りつづいている九月の末から十月のはじめにかけて、突然僕の身の上に、種類のちがった難問題が二つ一度に差し迫って来た。 難事の一は改造社という書肆が現代文学全集の第二十二編に僕の旧著若干を採録し、九月の十五六日頃に之を販売した。すると編中には二十年前始て博文館から刊行した「あめりか物語」と題するものが収載せられていたので、之がため僕は九月二十九日の朝、突然博文館から配達証明郵便を以て、改造社全集本の配布禁止の履行と併せて、版権侵害に対する賠償金の支払を要求せられることになった。改造社の主人山本さんが僕と博文館との間に立って、日に幾回となく自動車で往復している最中、或日の正午頃に一人の女がふらふらと僕の家へ上り込んで来て、僕の持っている家産の半分を貰いたいと言出した。これが事件の其二である。 博文館なるものはここに説くまでもなく、貴族院議員大橋新太郎という人を頭に戴いて、書籍雑誌類の出版を営業としているものである。ふらふらと僕の家へやって来た女は一時銀座の或カッフェーに働いていた給仕人である。本屋と女給とは職業が大分ちがっているが、しかし事に乗じて人の銭を
永井荷風
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