中原中也
中原中也 · 日本語
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中原中也 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
疲れてゐるのに眠られぬ。車室の中は満員である。棚の上もトランクや土産物で一杯である。 僕の連れの男は僕の丁度直ぐ前の席に、もう先刻から眠つてゐる。汽車が東京を出発してから、二タ言三言言ひかはしたばかりである此の男は、節野と云つて、外国語学校の夜学で知合ひになつた男である。午後の五時から七時までのその夜学では、生徒は勤め人かそれとも他の学校に席を有してゐるものであり、如何にもみんな一寸顔を出してゐるといつた気持で来てをり、二年間一緒の教室にゐて、一度も話を交はさずに終る男もあるのである。僕と節野とは、教室で可なり口をきき合つたのであり、一緒に酒場なぞにも行つた男であるが、それでも彼の昼間通つてゐる日本大学の同級生が其の場に来合せたりすると、その方が主になるのである。無論僕は、愉快な男といふのでもないから、さうなるのでもあるけれど、なんとなくその夜学といふのは、妙に互ひにそはそはした気持でゐる所であり、其処での知合ひだといふことが僕達を打解けさせない大きい理由のやうに思はれるのであつた。僕達は今卒業して、二人ともそれぞれの郷里に帰つてゆく。随分愛想のいいその男が、汽車に乗るや間もなく眠つて
中原中也
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